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チェス500名局2 アーカイブ

2009年08月31日

チェス500名局(101)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第101局

白 カパブランカ
黒 ミルナー=バリー
(マーゲート、1935年)

 危なっかしい戦型の弱点にくらいつくのは至芸である。結局のところ「メレル防御」とはそういったものである。

 セニョール・カパブランカは「戦法」の因習打破主義者として知られていた。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O

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5...Bc5

 メレル防御の基盤は閉鎖防御の 5...Be7 や開放防御の 5...Nxe4 よりも厳密さに劣ることは確かである。英国のマスターのP.S.ミルナー=バリーは実戦理論の神殿に貴重な得点を数多く奉納してきた。それは選手にとっては敗戦だが理論にとっては進歩である。

6.c3 Ba7 7.d4 Nxe4

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8.Re1

 ルークの参戦は 8.Qe2 でクイーンが参戦するよりも効果的であることが分かってくる。

8...f5

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9.Nbd2

 中央志向的な指し方である。

 ここで 9.Rxe4 で交換損する非凡な着想もある。以下は 9...fxe4 10.Bg5 Ne7 11.Nxe5 O-O 12.Bb3+ と進むが、12...d5 が負けず劣らずの非凡な応手で黒が持ちこたえる。

9...O-O

 黒は敵の手段、特にキング翼ルークの活動の可能性を過小評価していた。9...Nxd2 と交換に応じておくべきだった。

10.Nxe4 fxe4 11.Bg5

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 これは先まで見通した捌きの挿入手である。

11...Qe8 12.Rxe4

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12...d6

 12...d5 には 13.Rxe5 がある。

13.dxe5 Qg6 14.Rf4

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 これは理にかなった戦略である。逆襲の 14...Rxf3 をなくしただけでなく半素通しのf列で黒の期待した反撃をすべて消し去った。

14...Rxf4 15.Bxf4

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15...Bg4

 黒は他に指しようがない。15...b5 なら 16.Qd5+、15...dxe5 なら 16.Bxc6、15...Nxe5 なら 16.Bxe5 dxe5 17.Qd8+ Kf7 18.Nxe5+[訳注 18.Bb3+ Be6 19.Nxe5# なら即詰み]である。

16.Qb3+ Qf7

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 黒は 17.Qxb7 Rb8 18.Qxc6 Qxf4 のわずかな望みにかけた。しかし白の巧妙な捌きで全ての抵抗が終わった。

17.Ng5 Qxb3 18.Bxb3+ 黒投了

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2009年09月07日

チェス500名局(102)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第102局

白 ラスカー
黒 シュタイニッツ
(リターンマッチ、モスクワ、1896年)

 クイーンが交換になった試合でも退屈で無味乾燥な進行をたどるとは限らない。

 本局の戦いで黒は巧妙に相手の弱点をあばき自分の弱点を隠した。黒ルークの縦列の連係は非常に参考になる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 d6

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 この遅延シュタイニッツ防御は本筋の戦法で耐久性がある。

5.d4

 この単刀直入な手は純正シュタイニッツ防御(3...d6 4.d4)に対しては最強手である。しかしここでは奇妙なことに最も積極的でない。

5...Bd7

 これはかなり用心深い手である。思い切って 5...b5 6.Bb3 Nxd4(6...exd4 は 7.Bd5 から 8.Nxd4 で良くない)7.Nxd4 exd4
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と指せば黒は次のように難解な局面に持ち込むことができた。

 (a)8.Qxd4(はまった手)8...c5 9.Qd5(勇んで黒のルークとfポーンを両当たりにした)9...Be6 10.Qc6+ Bd7 11.Qd5 c4 黒が2ポーンの代わりにビショップを取った。この布局のはめ手は「ノアの箱舟」と呼ばれていて、マスターの実戦にも現われたことがある。

 (b)8.Bd5 Rb8 9.Bc6+(またはすぐに 9.Qxd4 Bd7 10.a3 でほぼ互角の形勢)9...Bd7 10.Bxd7+ Qxd7 11.Qxd4 局面が単純化して互角になり易い。

 (c)8.c3(ギャンビット気分で局面を活性化させる)8...Bb7(8...dxc3 は白が望めば 9.Qd5 Be6 10.Qc6+ Bd7 11.Qd5 で強制的に引き分けにできる)9.cxd4 Nf6 どちらも指せる分かれである。

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6.Bb3

 必然性もないのにビショップによる支配を止めてしまった。白は 6.c3 で争点を維持することができた。その後黒は単刀直入に 6...Nf6 と展開するか、もっと狡猾に 6...Nge7 から ...Ng6;...Be7 と構えるか、はたまた 6...g6 から 7...Bg7 とフィアンケットすることができ、十分指せる。

6...Be7

 もちろん 6...Nf6 には 7.Ng5 があって良くない。

7.dxe5 dxe5 8.Qd5 Be6 9.Qxd8+ Rxd8 10.Bxe6 fxe6 11.c3

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 6手目から始まった白の作戦がこれで明らかになった。それはお互いのクイーンを消去し、敵陣に二重ポーンをこしらえることである。しかし今度ばかりは収局の達人のラスカー博士がミスを犯していた。彼が見落としていたのは本当の収局がはるか先であるということだった。

 黒は既に素通しのd列を支配し、すぐにf列でも活動することになる。

11...Nf6 12.Nbd2 Bc5

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 そしてさらにこの斜筋が黒の管理下に入った。

13.b4 Ba7 14.a4 b5

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 クイーン翼の端での白のもくろみに水を差した。

15.Ke2

 15.axb5 は 15...axb5 16.Ra6 Bb6(または 16.Nxe5 Bxf2+)で効果がない。

15...Bb6

 16.axb5 axb5 17.Nxe5 を避けた。

16.axb5 axb5 17.Ne1 Rf8 18.f3 Rf7 19.Nb3

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 働いていないビショップを外に出したくなるのは当然だが敵の戦術を不注意に見落としていた。黒は陣形上の優位を戦力上の優位に転換できる機会を与えられた。白は本譜の準備として 19.Rf1 が必要だった。

19...Nxe4

 一見守られていそうなポーンをかすめ取った(20.fxe4 Rf2#)。後は単なる技術の問題である。

20.Bb2 Nd6

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 狙いは 21...Nc4 だけでなく 21...e4 による敵陣突破(21.Nd2 に対しても)である。

21.Rf1 Nc4 22.Bc1 Ne7 23.Bg5 Nd5

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 この手は読みに裏打ちされている。交換損しても黒は敵キングを4駒で集中攻撃する態勢になれる。

24.Bxd8 Nf4+ 25.Kd1 Rd7+

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26.Kc2

 26.Kc1 には 26...Ne2+ がある。

26...Ne3+ 27.Kb2 Nxf1 28.Bg5 Ne3 29.Bxf4 exf4

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 駒の交換が少し進んで黒は1ポーン得でしかないが陣形上の優位は大差のままである。

30.Rc1 e5 白投了

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 白はほとんど手詰まりに陥っている。黒は 31...Rd6 から ...Rg6 や ...Rh6 でさらに圧力を強めることができる。

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2009年09月14日

チェス500名局(103)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第103局

白 カパブランカ
黒 マーシャル
(番勝負、1909年)

 歴史的に見てこの試合は新手(5...f5)が現れたことに意義がある。白は大変な苦労を強いられた。

 この手はその後注目されないままだったがその価値を認識したカパブランカは18年経った1928年ブタペストでの大会でよみがえらせた。これが「シエスタ・ギャンビット」の由来である。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 d6 5.c3 f5

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 この手はシュリーマン防御(3...f5)を連想させるがそれほど危険を伴わない。以下の手も独創性には欠けるが立派な手である。

 (a)5...Bd7 自陣内を固める手である。

 (b)5...Nf6 純粋に展開を図る手である。

6.exf5

 これは普通の応手である。6.d4 は剣の刃渡りのような捨て駒によって一直線に引き分けに至る(第105局のレーティ対カパブランカ戦を参照)。

6...Bxf5

 すぐに 6...e4 と突くのは 7.Nd4 とかわされて良くない。

7.d4

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7...e4

 この手は効果的な橋頭堡を築こうとしている。7...exd4 は 8.Nxd4 で、また 7...b5 も 8.Bb3 で黒が良くならない。

8.Qe2

 中原も戦場になってきた。8.Ng5 には 8...d5 がしっかりした応手である。また 8.d5 は小ぜりあいの末に引き分けになる。中間手の捌きの 8.Bg5 は第104局のA.シュタイネル対カパブランカ戦に現れる。

8...Be7 9.Nfd2 Nf6 10.h3

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 白の展開はゆっくりしているがいずれ黒の伸びすぎを咎めるつもりである。

10...d5

 この間に黒は中原の陣形を強化した。

11.Nf1 b5

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 この手は 11...O-O よりも緊急性が薄い。

12.Bc2 Na5 13.Ne3 Bg6 14.Nd2 O-O 15.b4

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 陣容を整備した白は側面で攻勢に出た。

15...Nc4 16.Ndxc4

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16...dxc4

 16...bxc4 は 17.a4 で白がクイーン翼で多数派ポーンを確立して楽な展開になる。本譜は黒のeポーンが孤立した。

17.a4 Nd5 18.Nxd5 Qxd5

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19.axb5

 19.Be3 は 19...a5 で白のクイーン翼がばらばらにされる。

19...e3

 中原の形がほぐれた。

20.O-O Rxf2 21.Rxf2 exf2+ 22.Qxf2 Rf8 23.Qe2 Bxc2 24.Qxc2 axb5 25.Be3 Bd6

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 白はクイーン翼のポーンの形が優っているが、駒の働きは黒の方が良い。形勢はほぼ互角になっている。

26.Bf2 Qg5 27.Qe4

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 27...Qf4 を防いだ。

27...h6

 27...Qd2 と突っ込んでも 28.Be1 で何も起こらない(28.Qe3 でもよく、クイーン交換は白が有利である)。

28.Re1

 28.Ra8 と突っ込むのは 28...Qc1+ 29.Be1 Rxa8+ 30.Qxa8+ Kh7 31.Qe4+ g6 となって白陣もあまり威張れない。

28...Rxf2

 この清算は賢明な策である。

29.Kxf2 Bg3+ 30.Kg1 Bxe1 31.Qxe1 引き分け

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 この試合でマーシャルは自分の考案した布局の優秀さをほめられてよい。

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2009年09月21日

チェス500名局(104)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第104局

白 シュタイネル
黒 カパブランカ
(ブダペスト、1928年)

 本局はこの戦型がいわば正式に捧げられたことに定跡の面からの興味がある。ついでに言えばこの戦型は1928年にブダペストで開催された大会が「シエスタ大会」とも呼ばれたことに由来している。

 試合内容自体も非常に興味深い。黒はまず序盤で相手のもくろみをつぶし、その後はクイーン交換に続いてゆっくりと着実に局面の制圧を進め、戦力的に優勢に至った。これはまさに偉大なる技巧派であり芸術派の成せる技である。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 d6 5.c3 f5 6.exf5 Bxf5 7.d4 e4

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 黒がこの橋頭堡を維持できれば優勢な勢力を保つのは明らかである。

8.Bg5 Be7 9.Nh4 Be6

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 黒はすべての危険をかわしながら陣容を固めた。

10.Bxe7 Ngxe7

 10...Qxe7 と取るのはずっと劣った手で 11.d5 Qxh4 12.dxc6 b5 13.Bb3 e3 14.O-O となる。

11.Qh5+ g6

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12.Qh6

 この手はあまりに楽観的な手である。代わりに 12.Qe2 d5 13.O-O と分別のある戦略に従うことが必要だった。

12...Ng8

 この斬新な逆捌きで黒は陣容を立て直した。

13.Qf4

 13.Qg7 に対して黒は 13...Qxh4 14.Bxc6+ bxc6 15.Qxh8 O-O-O と犠牲を伴う手を指す必要はない。単純に 13...Qf6 14.Qxc7 Nge7 とすれば黒が有望である。

13...Nf6 14.Nd2 O-O

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 これは理にかなった精力的な手である。

15.O-O

 白もキングを安全な所に移すのを急いだ。その前に 15.Nxe4 と取るのは危なすぎる。例えば 15...Nxe4 16.Qxe4 Re8 17.O-O-O(17.O-O は 17...Bc4 で白の交換得)17...Qg5+ 18.Rd2 d5 で黒の勝勢である。

15...d5

 この手には 16...Nh5 でh4のナイトを取る狙いがある。

16.Qg5

 その狙いをかわすために 16.g3 と突くと今度は 16...Ng4 でクイーンが取られる。本譜の手の後白は 17.Nxg6 hxg6 18.Qxg6+ Kh8 19.Qh6+ Kg8(19...Nh7 は 20.Qxe6)20.Qg6+ によるチェックの千日手を狙っている。

16...Nh5 17.Qxd8

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17...Nxd8

 黒が 17...Raxd8 18.Bxc6 bxc6 19.g3 を避けたのは収局のためにポーンの形を弱めたくなかったからである。

18.g3

 18...g5 の狙いに備えた。

18...Bh3 19.Ng2 Ne6 20.Bb3 c6 21.Bd1

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 白はこの手か次の手で f4 と突く方が良かった。本譜の手からの交換は黒の攻撃力を強めてしまう。

21...Rae8 22.Bxh5 gxh5 23.f4 h4

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 黒は巧妙に孤立ポーンの解消を図った。

24.Rfe1 hxg3 25.hxg3 Bxg2 26.Kxg2 Re7 27.Nf1 Rg7

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 28...Nxf4+ の狙いがあるので白キングはまた位置を変えなければならない。

28.Kh1 h5

 黒はまた(29...h4 で)白の防御陣を打ち破ろうとしている。

29.c4

 そこで白は戦線の別の方面で敵をかく乱させようとした。

29...Nxd4 30.Red1 Nf3 31.cxd5

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31...h4

 先に 31...cxd5 32.Rxd5 と交換してから 32...h4 と突く方がもっと簡明だった。本譜の手の後白は反撃の機会を得た。

32.d6 hxg3 33.Kg2 Nh4+ 34.Kg1

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34...g2

 この時期尚早のポーン突きで黒の手が難しくなってしまった。34...Rxf4 も 35.d7 とされるので誤りである。正着は 34...Kh7 と備えておく手だった。以下は例えば 35.Rac1 Rxf4 36.d7 Rf2 37.Nxg3(37.d8=Q は白キングが2手詰みになる)37...Rg2+ 38.Kh1(38.Kf1 は 38...Rf7+ 39.Ke1 Nf3#[訳注 40...Kf1 で詰まないので正着は 38...e3 です])38...R7xg3 39.Rc3 Nf3 30.Rxf3 exf3
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の後 41...Rh3# で詰みになる。

35.Nh2 Rxf4

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 この手には大きな落とし穴が用意されていたが白ははまらなかった。

36.Rd4

 この手は 37.d7 の狙いがあるので先手になる。それによりもう一つのルークが戦闘に加われる。すぐに 36.d7 と突くのは時期尚早で 36...Rf1+ 37.Nxf1(37.Rxf1 は 37...gxf1=Q+ 38.Kxf1 Rxd7 で黒が2ポーン得のままである)37...Nf3+ 38.Kf2 g1=Q+ 39.Ke2 Rg2#
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で詰みになる。

36...Rd7 37.Re1 Nf5 38.Rdxe4 Rxe4 39.Rxe4 Rxd6

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40.Nf3 Rg6 41.Re5 Nd6 42.Re2 Kf8 43.Rxg2

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43...Rf6

 43...Rxg2+ 44.Kxg2 からのナイト収局はほとんど勝つ見込みがない。

44.Ne5 Ke7 45.Rf2 Re6 46.Nd3 Re3 47.Nf4 Nc4

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48.b3 Ne5 49.Ng2 Rc3 50.Re2 Kd6 51.Kf1 Rc1+

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 これは油断のならないチェックである。52.Ne1 は 52...Nd3 で駒が全部清算されるし 52.Re1 は 52...Nd3 53.Rxc1 Nxc1 でまたポーンが落ちる。

52.Kf2 Nd3+ 53.Ke3 Nb4 54.a3

 さもないと 54...Ra1 51.a4 Rb1 とされる。

54...Rc3+ 55.Kd4 Rc2

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 これはうまい手段である。

56.Re1 c5+

 これで2ポーン得になる。そして白の懸命の抵抗にもかかわらず黒の勝ちが決まった。

57.Ke4 Rxg2 58.axb4 Rg4+ 59.Kd3 Rxb4

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 白はもう少し指して投了した。

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2009年09月28日

チェス500名局(105)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第105局

白 レーティ
黒 カパブランカ
(ベルリン、1928年)

 前局は一つの戦法の誕生を告げた。本局は白を破局に追い込んでこの戦法の価値を立証した。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 d6 5.c3 f5

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 シエスタ・ギャンビットが始まった。

6.d4

 白は中原で一騒動起こそうとしている。

6...fxe4

 6...exd4 と取るのは 7.Bxc6+ bxc6 8.Nxd4 で白が良い。

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7.Ng5

 ここはきわめて重大な局面である。一本道の引き分けになるのは次の手順である(初めての例はマローツィによって示された)。7.Nxe5 dxe5 8.Qh5+ Ke7 9.Bg5+ Nf6 10.Bxc6 bxc6 11.dxe5 Qd5
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(黒は巧妙に駒得を維持した。12.exf6+ なら 12...gxf6 で白のビショップが釘付けになる)12.Bh4 Ke6 13.Bxf6 gxf6 14.Qe8+ Kf5 15.Qh5+ Ke6 16.Qe8+
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このように永久チェックで引き分けになる。捨て駒によるこの引き分けは「ジュオコ・ピアノ」の「メレル攻撃」を連想させる。

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7...exd4

 ロシアのマスターのズノスコ=ボロフスキーは 7...d5 8.dxe5 Bc5 という面白い手を考えた。

8.Nxe4

 ここでは 8.Bxc6 bxc6 9.Qxd4 と単純化を図るのが必須だった。

8...Nf6 9.Bg5 Be7

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10.Qxd4

 この手はうかつな手だった。しかし 10.Bxc6+ bxc6 11.Qxd4 O-O でも素通しのf列のおかげで黒が陣形的に優っている。だから最善は 10.Bxf6 Bxf6 11.Qh5+ g6(11...Kf8 もある)12.Qd5 でどちらも指せる分かれである。

10...b5 11.Nxf6+ gxf6

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 白は3個の駒が「当たり」になっている。

12.Qd5 bxa4

 黒は敵のどちらのビショップでも取れるが正しい方を取った。12...fxg5 とこちらを取るのは 12.Bb3 で駒を助けられてしまう。

13.Bh6

 13.Qxc6 は 13...Bd7 で黒の勝勢になるので白は敵陣に突入しようとした。

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13...Qd7

 これがまさにぴったりの一手だった。当たりのナイトを守り、キングのために枡を空けて永久チェックの狙いを防いでいる。

 一手ばったりのポカは 13...Bd7 で、14.Qh5# で頓死する。

14.O-O Bb7 15.Bg7 O-O-O

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 この手の後局面の展開が速くなる。

16.Bxh8 Ne5

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 これが黒の決め手である。

17.Qd1

 17.Qd4 なら 17...Nf3+ 18.gxf3 Rg8+ 19.Kh1 Bxf3# で詰んでしまう。

17...Bf3

 これは囲いを崩す捨て駒である。

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18.gxf3

 18.Qd4 なら 18...Rg8 19.g3 Qh3 で決まる。

 本譜の手で白は 18...Rg8+ 19.Kh1 Qh3 20.Rg1 Rxg1+ 21.Qxg1 Qxf3+ 22.Qg2 で助かることを期待していた。

18...Qh3

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 黒の最後の4手はハンマーの打撃のようだった。

 白投了
(19...Rb8+ と 19...Nxf3+ の両方の狙いが受からない)

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2009年10月05日

チェス500名局(106)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第106局

白 アリョーヒン
黒 コルタノフスキー
(ロンドン、1932年)

 序盤でいつもの手順をたどった後白は最初に予防の手(19.a3 と 20.h3)によって単に大局的な優勢を維持しようとし、それによってもたらされる動的な手段に期待した。

 必然的な捨て駒(22.Nxc7)は普通ではない性質のものだった。黒のクイーン翼を乱してからのキング翼への白の侵入はいっそう効果的だった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 d6 5.Bxc6+

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 「遅延交換戦法」と呼んでもよいかもしれないこの戦型では白は布局の課題を単純明快に解決しようとしている。

5...bxc6 6.d4

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6...exd4

 このように中原を放棄するのは 6...f6 で中原を維持しようとするよりも執着心がない表れである。6...f6 の後は例えば 7.Be3 Ne7 8.Nc3 Be6(ここからの駒の組み換えは 8...Ng6 9.Qd2 Be7 10.O-O-O や 8...g6 9.Qd2 Bg7 10.Bh6 よりも柔軟性がある)9.Qd2 Nc8 10.O-O-O(10.O-O はすぐに戦いが穏やかになる)10...Nb6 11.b3 Be7
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となって黒の防御はしっかりしている。

7.Nxd4

 この手は 7.Qxd4 Nf6 8.O-O Be7 で互角になるよりも効果的である。

7...Bd7

 7...c5 8.Nf3 は黒のd5の地点がかなり弱体化し、白がいつかe5突きを狙ってくる。

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8.O-O

 白はあっさりとキング翼の展開を完了させた。もっと意欲的な指し方は 8.Nc3 Nf6 9.Qf3(狙いは 10.e5)だが 9...c5 とすぐに反撃され 10.Nf5 Bxf5 11.exf5(穏やかでないのを望むなら 11.Qxf5)11...Be7 12.Qc6+ Nd7 13.Nd5 Ra7(これで全て安全である)14.O-O O-O
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で均衡を取り戻す。

8...g6

 普通の展開の手は 8...Nf6 9.Nc3 Be7 でどちらも指せる。本譜の手も可能だがもっと注意深さがいる。

9.Nc3 Bg7

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10.Re1

 この手は単刀直入に 10...Nf6 と跳ねてくる手を防いでいる(それに対する応手は 11.e5 である)。

 代わりに 10.Be3 は 10...Nf6 11.h3(11.Qd2 には 11...Ng4)11...O-O 12.Qd2 Re8 13.Bg5 Qb8(白の2ポーンが攻撃されている)14.Bxf6 Bxf6
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で黒が双ビショップの態勢になる。

10...Ne7 11.Bf4

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 これは6手目の構想と呼応した手である。つまりe5の地点をにらみ、それと同時に黒枡の斜筋にクイーンとビショップのバッテリーを配置する準備をしている。

11...O-O 12.Qd2 c5

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13.Nb3

 13.Nde2 の方が簡明だが、13.Nf3 は 13...Bg4 で良くない。

13...Nc6 14.Bh6

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 大局観により交換を目指した。結果として黒は守り駒の黒枡ビショップを失い「黒枡群」に弱点を抱えたままになる。

14...Be6 15.Bxg7 Kxg7 16.Nd5 f6 17.Rad1 Rb8 18.Qc3 Qc8 19.a3

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 黒枡の対角斜筋とd列のにらみのおかげで大局的な優勢を確立した白は黒が(19...Nb4 のように)あばれる手を防ぐことに主に注意を向けている。

19...Qb7 20.h3

 これも穏当な手である。しかしこれから起こる重大な事態の変化によっては必須となるかもしれない(キングの逃げ道として)。

20...Rf7 21.Re3

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21...Qb5

 ここが正念場である。敵の狙いを看破すれば黒はどんなことがあろうと 21...Bxd5 で単純化に甘んじるべきだった。これは重要な駒をなくすことになるが 22.exd5 Nd4 23.Nxd4 cxd4 24.Rxd4 Qxb2(目には目を、ポーンにはポーンを)25.Qd2 Qa1+ という進行になれば白が大局的にいくらか優勢であっても黒は持ちこたえる希望がある。

 本譜の手は 22...c4 の意図だがクイーンが主戦場からあまりに遠くさまよっている。

22.Nxc7

 ずっと先まで見通した「形を乱す捨て駒」である。

22...Rxc7 23.Rxd6

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23...Bc4

 黒には色々な応手があるが次のように白はそのすべてについて読んでおかなければならなかった。

 23...Nd8 には 24.Rf3 Rf7 25.Nxc5 Qe8 26.Rxa6 で白は攻撃をゆるめることなく駒1個の代わりに4ポーンを得る。

 23...Nd4 には 24.Nxd4 で白が勝つ。

 23...Qc4 には 24.Nxc5 である。

 23...Bxb3 には 24.Qxf6+ Kh6 25.Rxb3 Qa4 26.Rxc6 で果敢に駒を取り返す。

 23...c4 には 24.Rxe6 cxb3 25.Qxf6+ Kh6 26.Rxb3 である。

 23...Re8 には 24.Nxc5 Nd8 25.b4 でどの狙いにも対処している。

 23...Kf7 は 24.Rf3 Ke7 25.a4 Qb6 26.Rxe6+ Kxe6 27.Nxc5+ Kd6 28.Qxf6+ Kxc5 29.Rc3+ Kb4 30.Qd6+ Ka5 31.Qd5+ Kxa4 32.Ra3+ Kb4 33.c3#
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で詰みになる。

 最後に 23...Bf7 は 24.Rxf6 Nd4(24...Kg8 なら 25.Nxc5 Qxb2 26.Nxa6)25.Nxd4 cxd4 26.Qxc7 Kxf6 27.Rf3+ で白の勝ちになる。

24.a4

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 これは多目的の「そらしのポーン捨て」である(ビショップ、ナイト又はcポーン)。

24...Qxa4 25.Nxc5 Qb5 26.Qxf6+ Kg8 27.Nd7

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 ナイトは白駒の中の英雄である。

27...Rd8

 27...Rbc8 なら 29.Rf3、28...Re8 なら 29.Qc3 で白の勝ちになる。

28.Rf3

 間接的にナイトを守った。

28...Qb4

 29...Rcxd7 を狙っている。

29.c3 Qb5 30.Ne5

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 これが「とどめ」になった。

30...Rdc8 31.Nxc6 黒投了

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 (31...Rxc6 32.Rd8+ Rxd8 33.Qxd8 Kg7 34.Qf8#)

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2009年10月12日

チェス500名局(107)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第107局

白 ケレス
黒 アリョーヒン
(マーゲート、1937年)

 本局で黒ははやばやとキャッスリングが困難になってしまった。とうとう1ポーンを犠牲にし陣容を全体的に悪くした末にキャッスリングした。そのあと白の巧妙で辛辣な指し方の前に黒の形勢はたちまち悪化した。

 終局も近くなった敗勢の局面でアリョーヒン博士にしては極めてまれなポカが飛び出した。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 d6 5.c4

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 白は辛辣な手法を試みた。この手は「ドゥラス戦法」(3...a6 4.Ba4 Nf6 5.d3 d6 6.c4)を想起させるがd5の地点を封鎖し 5...b5 を防ごうとしている。

5...Bd7

 黒はいつかは必要となるこの手を優先し、キング翼での 6...Nf6、6...Be7、6...g6 などのいろいろな手段を保留した。1935年ワルシャワでのべク対アンデルセンの奇抜な試合では逆襲の 5...f5 が試されたが成功しなかった。その試合は次のように進んだ。6.d4 fxe4 7.Nxe5(このナイト捨ては 5.c3 f5 6.d4 fxe4 の局面では引き分けにしかならないがこの局面では決め手となる)7...dxe5 8.Qh5+ Ke7 9.Bxc6
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9...Qxd4(9...bxc6 は 10.Bg5+ Nf6 11.dxe5 のあと 11...Qd5 という絶妙の受けがないのでやはり黒が駒を取られる)10.Qe8+ Kd6 11.Be3(11.Qxf8+ なら 11...Ne7 12.Qxh8 Bg4 で黒が勝つ[訳注 12.Qxg7 で白の勝勢のようです])11...Qxc4(11...Qxb2 は 12.c5#)12.Nc3 Bg4 13.Rd1+
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となって黒が投了した。

6.Nc3

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6...g6

 6...Nf6 なら白は 7.d4 Be7 8.O-O でもっと楽に中原に永続的な圧力をかけることができる。

7.d4

 白は組織的に 7.d3 Bg7 8.Be3 と陣形を整えるよりも中原ですぐに仕掛ける方を好んだ。

7...Bg7 8.Be3 Nf6

 この手よりも 8...Nge7 でビショップの筋を開けておく方が合理的だった。

9.dxe5

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9...dxe5

 黒は 9...Nxe5 からの単純化を避けてよけいに悪くした。9...Nxe5 10.Nxe5 dxe5 のあと 11.Bc5 ときても黒は 11...Bxa4 12.Qxa4+ Qd7 で大丈夫だった。

10.Bc5

 しかし本譜では黒がキング翼へキャッスリングできないことが不利につながった。

10...Nh5

 これは主導権を得ようという手だが簡単にかわされる。だから黒は 10...Ng8 から 11...Nge7 で陣形を整備すべきだった。

11.Nd5

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 ナイトをf4からe6に据えようという黒の意図をくじいた。

11...Nf4 12.Nxf4 exf4 13.e5

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 このポーンの犠牲には深い構想がある。

13...g5

 13...Nxe5 14.Nxe5 Bxe5 15.Qe2 でポーンの犠牲を受け入れると白の攻勢が明らかになるがそれでも本譜よりは良かっただろう。本譜は黒が全然楽にならない。

14.Qd5

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14...Bf8

 黒が前の手の意図を継承して 14...g4 と突くと 15.e6 が炸裂する。以下は 15...Bxe6(15...fxe6 は 16.Qh5#)16.Bxc6+ bxc6 17.Qxc6+ Bd7 18.Qe4+ Be6 19.Rd1 Qc8 20.Qc6+ Bd7 21.Rxd7 Qxd7 22.Qxa8+
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で白の勝ちになる。

15.Bxf8 Rxf8 16.O-O-O Qe7 17.Bxc6

 クイーン翼へのキャッスリングもできないようにした。

17...Bxc6 18.Qd3

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18...Bd7

 これでやっとキャッスリングができるようになったがポーンを取られる。18...h6 で自分の財産をできるだけ保全しておいた方が堅実だった。

19.Nxg5

 もちろん黒はこのナイトを取れない。

19...O-O-O 20.Nf3

 これは賢明な判断だった。20.Nxh7 と欲張ると 20...Rh8 21.Nf6 Bg4 で黒の交換得になる[訳注 22.Nd5 で白が悪くないようです]。

20...f6 21.exf6 Rxf6 22.Rhe1

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 白は圧倒的な態勢である。

22...Qb4

 これはもちろん悪手である。不利な局面で急転直下の破局につながった。しかし 22...Qg7 でも 23.Qd4 で 24.Qa7 とすぐではないかもしれないが 24.Ne5 を狙われる。

23.Qxd7+ 黒投了

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2009年10月19日

チェス500名局(108)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第108局

白 ビナベル
黒 エングリシュ
(ロンドン、1883年)

 本局にまざまざと描かれているのは敵の要塞に侵入する技法である。一旦立てられた作戦が実現するまでに長い手数を要したということは問題がそもそも難しかったということを物語っている。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6

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 この「交換戦法」は布局の神秘を単純化によって解決しようとするものである。

4...dxc6

 4...bxc6 は本筋の手ではない。本譜の手は二重ポーンの代償を素通しのd列とクイーン翼ビショップの活動で得ようとするものである。

5.O-O

 周知のように 5.Nxe5 でポーン得することはできない。5...Qd4 またはもっと厳しく 5...Qg5 で咎められる。

5...Bg4

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 黒はこの手で主導権を握ろうとしている。

6.h3 Bxf3

 しかし黒はもうそれを放棄してしまった。主導権を握ろうとするなら 6...h5 7.d3(7.hxg4 は 7...hxg4 8.Nxe5 Qh4 9.f4 g3 で明らかにだめである)7...Qf6 と指すべきだった。

7.Qxf3 Qd6 8.d3

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 キャッスリングは反対側になるが局面は穏やかな進行をたどっている。

8...f6 9.Nd2 O-O-O 10.Nc4 Qe6 11.Qg3 g5 12.a4 b6

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 黒は 13.a5 で押さえ込まれないようにしなければならない。本譜の後 13.a5 なら 13...b5 でクイーン翼の列は閉鎖されたままである。

13.Be3 Ne7 14.f3 Ng6 15.Qe1 a5 16.Qc3 Bb4 17.Qb3 Qe7 18.g3 h5 19.Kg2 h4 20.g4

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 白もキャッスリングした陣形が安全に閉鎖されたままになるように気をつけた。

20...Rhe8 21.Kh2 Nf8 22.c3 Bc5 23.Rad1 Ne6 24.Qc2 Bxe3 25.Nxe3 Qc5 26.Nf5 Rd7 27.Rd2 Red8 28.Rfd1 Nf4

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 黒もうまいことナイトをこの橋頭堡に据えたが残念ながらその圧力を支援する他の駒の協力がない。

29.d4

 ぴったりのタイミングで白は弱点の出遅れポーンを中原での強力なてこに変えた。

29.Qc4 30.d5

 このポーン突きは戦術上の策略で、30.b3 Qf7 よりも黒にとって嫌な手である。

30...cxd5

 一刻も早く二重ポーンを解消したいのはよく分かるが、まず 30...Kb8 としておくのも一理あった。

31.exd5

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31...Kb8

 この手は 32...Rxd5 が狙いである。ここですぐに 31...Rxd5 と取るのは 32.Ne7+(31...Nxd5 でも 32.Rxd5 Rxd5 33.Ne7+[訳注 これは黒勝勢になるので正着は本譜のように 32.Qe4 です])とされるのでまだ時期尚早である。

32.Qe4

 これは気のつきにくい受けである。代わりに 32.d6 は 32...cxd6 33.Nxd6 Rxd6 34.Rxd6 Rxd6 35.Rxd6 Qf1
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となって黒の狙いが強烈である。

32...Qxe4

 32...Qc5 と交換を避けると 33.c4 Qb4 34.Qc2 となる。しかし 32...Qb3 も考えられた。

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 クイーン交換の後両者とも勢いが落ちたようである。そしてここから長期に渡る「消耗戦」が始まる。

33.fxe4 Kb7 34.Rf2 c6 35.c4 c5 36.Ne3 Re8 37.Ra1 Rf8 38.Ra3 Rc8 39.Rb3

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 これはいわば山の上に据えられた大砲である。

39...Rf8 40.Nc2 Ra8 41.Kg1 Re8 42.Kf1 Ra8 43.Rff3 Re8 44.Ne3 Rf8 45.Nf5 Re8 46.Rb5

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 黒は狭い自陣内で守勢一方に追い込まれているのに対して白の駒は驚くほど動き回っている。ここからの白の狙いは 47.Rfb3 だけでなく 47.b4(47...axb4 なら 48.a5、47...cxb4 なら 48.c5)もある。

46...Ka7

 黒は 47.Rfb3 に対して 47...Rb8 の受けを用意した。

47.b4

 これは敵の防波堤をばらばらにするためのポーン捨てである。ここから劇的な展開が続いた。

47...axb4

 プロブレム作家の用語では 47...cxb4 48.c5 は「鏡像変化」ということになる。

48.a5

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48...Rb8

 黒は裂け目をふさごうとした。代わりに 48...bxa5 は 49.Rxa5+ Kb6 50.Rb5+ Kc7 51.Rxc5+ Kd8 52.Rb3 で黒の最期が早く来る。

49.Rb3 Rc7 50.Rb1

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50...Rd7

 50...Nxh3 は 51.Ra1 から 52.axb6+ Kb7 53.Nd6# の狙いがある。

51.Ra1 Rbb7 52.axb6+ Kb8 53.Ra6 Rd8 54.Rxc5 Nxh3

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 黒はいまわのきわに追い詰められた。

55.Rca5 Kc8 56.c5 b3 57.c6 b2

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58.Ra8+

 または「双対」の 58.Ne7+ から 59.Ra8# でも詰みになる。

58...Rb8 59.Ne7#

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2009年10月26日

チェス500名局(109)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第109局

白 ラスカー
黒 シュタイニッツ
(世界選手権戦、1894年)

 この試合は二つの点で印象深い。一つは防御の根底を成す構想を実行する黒のひたむきさである(素通しのd列での圧力と双ビショップの連係)。もう一つは用いた手段の効率性である(破壊のための 18...f5 の犠牲、24...f5 による怒涛の進撃、そして特に幾何学的な様相を呈するナイト対ビショップの収局)。このような試合は盤上からクイーンが消えても活力までは奪われないことを如実に示している。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6 dxc6 5.d4

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 これは理にかなった手である。なぜなら白は収局においてのみキング翼のポーン数の優勢を活用できるからである。

5...exd4

 黒は「中原で決着をつける」挑戦を受けて立った。面白い着想(元米国選手権者のマーシャルによる)は 5...Bg4 6.dxe5(6.Be3 もある)6...Qxd1+ 7.Kxd1 O-O-O+ 8.Ke1(最善)8...Re8 で、黒がポーンを取り返す。

6.Qxd4

 6.Nxd4 と取るのは 6...c5 で白にとって有利さの劣る状況でのクイーン交換が不可避となる。実戦では白がクイーンの早期交換によりいわば中盤戦を全部すっ飛ばしてすぐに収局に入ることを望んでいる。

6...Qxd4 7.Nxd4

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7...c5

 この手は最も積極的である。すぐに 7...Bd7 から 8...O-O-O と指すこともできる。ほかには 7...Nf6 なら 8.Nd2 である。

8.Ne2 Bd7

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9.Nbc3

 この単純な展開の代わりにもっと気の利いた展開は 9.b3 である。その後は 9...Bc6 10.f3 Be7 11.Bb2 で白が陣容をまとめる。また 9...c4 10.bxc4 Be6 は 11.Nd2 で白がポーンを守りきる。

9...O-O-O

 迅速で単刀直入な展開を終えて黒は既に布局の課題をすべて克服した。

10.Bf4 Bc6 11.O-O Nf6 12.f3

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 これで中原における白ポーンの数的優位がこれから長期間確保される。

12...Be7 13.Ng3 g6 14.Rfe1 Nd7 15.Nd1 Nb6 16.Nf1

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 この手はd2の地点に利かせたものだが、自陣内でのこれまでの再編成は白にとってすべて順風満帆というわけではないことを表している。

16...Rd7 17.Be3 Rhd8

 黒は重要な方面に兵力を集結させた。そしてクイーン交換が済んでいるにもかかわらずまだ収局に至っていないことをこれから示していくことになる。指し手にも駒の犠牲や中盤戦に特有の他の着想が現れる。

18.b3 c4

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 この軽妙なポーン捨ては敵のポーン集団の価値を減少させる。

19.Bxb6 cxb6 20.bxc4 Bb4 21.c3 Bc5+ 22.Kh1 Rd3 23.Rc1

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23...a5

 すぐに 23...f5 は 24.Nb2 とされる。

24.Nde3

 このナイトはd5の地点を目指している。黒は 24.Nb2 でひとまず敵の応手を打診してみるべきだった。

24...f5

 これはキングの防御を突き崩す絶妙の着想である。

25.exf5

 取らずに 25.Nd5 は 25...fxe4 26.fxe4 で白陣にまた新しく弱点ができる。

25...gxf5

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26.h3

 26.Nxf5 は 26...Rxf3 27.Ne7+(27.gxf3 は 27...Bxf3# で双ビショップに凱歌があがる)27...Bxe7 28.gxf3 Bxf3+ 29.Kg1 Bc5+ 30.Ne3 Rd2
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で黒が勝つ。

26...Rg8

 黒は詰みの狙いを維持した(27.Nxf5 なら 27...Rxf3 28.gxf3 Bxf3+ 29.Kh2 Bg1#)。そして斜めの圧力(白枡の対角斜筋)に加えて今度は縦からの圧力(素通しのg列)を加えて白を圧迫した。

27.Nd5 Bxd5 28.cxd5 Rxd5 29.Rcd1 Rxd1 30.Rxd1 f4

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 このきらりと光るポーンは独力で敵のナイトだけでなくキング翼の3個の白ポーンも押さえ込んでいる。

31.Kh2

 31.Nh2 なら 31...h5 32.Rd5 Re8、31.Nd2 なら 31...Rd8 となる。

31...Re8 32.a4 Kc7

 収局が近づくにつれてキングの参戦が使命を帯びてきた。

33.h4 Kc6 34.c4 Bb4 35.Kh3 Re1

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 この清算はマスターのあかしである。以降のビショップ対ナイト収局では黒に切り札がある。

36.Rxe1 Bxe1 37.Kg4 Kc5 38.Kxf4 Kxc4

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39.Ke4

 39.h5 なら 39...b5 40.axb5(40.Ne3+ には 40...Kd3 で 41...Bd2 を狙う)40...a4 でポーンがまっしぐらにクイーン昇格枡を目指す。

39...Bxh4 40.g3 Bd8 41.Ne3+ Kb4 42.Kd3 Kxa4 43.Kc2 Kb4

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44.f4 Kc5 45.f5 Kd6 46.g4 b5 47.Nd1 Ke5 48.Nc3 b4 49.Na4 Kd4

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50.Nb2 b5 51.Kb3 Be7 52.g5 a4+ 53.Nxa4 bxa4+ 54.Kxa4 Ke5 55.Kb3 Kxf5 白投了

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2009年11月02日

チェス500名局(110)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第110局

白 ラスカー
黒 カパブランカ
(サンクトペテルブルク、1914年)

 世にも名高いこの試合で白はこの上ない効率的な手段で可能な最大限の効果を収めた。

 白の12手目の 12.f5 はそれだけで黒陣全体を封鎖したと言えるかもしれない。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6

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 この手はラスカーの十八番(おはこ)である。

4...dxc6 5.d4 exd4 6.Qxd4 Qxd4 7.Nxd4 Bd6

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8.Nc3

 これは純粋な展開の手である。もっと積極的な 8.f4 には 8...f6 と応じてくる。8.O-O や 8.Be3 のような穏やかな手に対しては黒は支障なく 8...Ne7 と指すことができる。

8...Ne7 9.O-O O-O

 黒は柔軟性に富む 9...Bd7 でどちらにキャッスリングするか態度を保留して敵を疑心暗鬼に陥らせるようにすることもできた。

10.f4

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 白は手の内を半分示した。

10...Re8

 この手は 11...Bc5 12.Be3 Nd5 を狙っている。しかしすぐに 10...Bc5 と指す方が簡明だった。

11.Nb3

 機先を制して上述のビショップの展開を阻止し逆に 12.e5 を狙っている。

11...f6

 黒は窮屈な陣形に甘んじた。しかし 11...f5 では 12.e5 Bb4 13.Ne2 Ng6 となってあまり感心しない(白のeポーンがパスポーンになっているため)。だから黒はこの機会に 11...Be6 で戦闘配置につけるべきだった。

12.f5

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 これは大胆なポーン突きである。長所(黒のクイーン翼ビショップの押さえ込み、黒のナイトの封鎖、自分のクイーン翼ビショップの利きの伸長)が短所(eポーンがむき出し)を上回っている。ここから激闘が始まる。

12...b6 13.Bf4

 この手で敵から唯一働いている駒を奪う。

13...Bb7

 13...Bxf4 14.Rxf4 c5 15.Rd1 Bb7 と指す方がもう少し駒が自由に動けた。

14.Bxd6

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 この手は一貫性に欠けるように見えるが-敵の二重ポーンを解消させる-黒陣の弱点を増加させる。

14...cxd6 15.Nd4 Rad8

 相手の意志に魅入られたかのように黒は受け一方にまわった。しかし 15...Bc8(16.Ne6 を防ぐため)としてから ...Ra7 としていればいくらか活動の自由が望めた。

16.Ne6

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 敵陣に侵入したナイトが敵をかく乱する。

16...Rd7 17.Rad1 Nc8 18.Rf2 b5 19.Rfd2 Rde7 20.b4

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 この手は黒が 20...c5 でビショップを自由にするのを防いだ。

20...Kf7

 クモの巣にかかったような状態の黒はたとえ交換損の犠牲を払っても 20...Rxe6 21.fxe6 Rxe6 で自由を確保した方が良かった。そうなれば白の勝ちは確実とはいえない。

21.a3 Ba8 22.Kf2 Ra7 23.g4 h6 24.Rd3

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24...a5

 この反撃策は黒の苦境を深めるだけである。ここでも 24...Rxe6 が比較的最良の手だった。

25.h4 axb4 26.axb4 Rae7 27.Kf3 Rg8 28.Kf4 g6 29.Rg3

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 この手は Rdg1 から g5 の準備である。

29...g5+ 30.Kf3

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30...Nb6

 黒はこの「誘いの隙」の手よりもともかく 30...gxh4 31.Rh3 d5 と打って出るべきだった。

31.hxg5

 白はh列を開けて貴重な資産を手に入れた。31.Rxd6 は 31...Nc4 で黒に ...Ne5+ からの反撃を許してしまう。

31...hxg5 32.Rh3 Rd7 33.Kg3

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 白は白枡の対角斜筋を空けて 34.e5 を狙っている。

33...Ke8

 黒は白のポーン突きの狙いをかわしたが一時的なしのぎにすぎない。

34.Rdh1

 35.Rh8 でビショップを取る狙いがある。

34...Bb7 35.e5

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 この「枡を空ける犠牲」のあと事態は急進展する。

35...dxe5 36.Ne4 Nd5 37.N6c5

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37...Bc8

 この手は仕方がない。37...Rc7 は 38.Nxb7 Rxb7 39.Nd6+ でひどいことになる。

38.Nxd7 Bxd7 39.Rh7 Rf8 40.Ra1 Kd8 41.Ra8+ Bc8 42.Nc5 黒投了

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 白からの三通りの狙い 43.Rd7+、43.Nb7+、43.Ne6+ に対して黒はどうすることもできない。例えば 42...Nb6 なら 43.Rb8 でナイトが取られるし 42...Ne7 なら 43.Ne6+ で白の勝ちになる。

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2009年11月09日

チェス500名局(111)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第111局

白 ファクトール
黒 ルビーンシュタイン
(ルージ、1916年)

 この試合で「収局の前に」-白はクイーン交換によってすぐにそこに行きたかった-「神は中盤を設けた」-そこにおいて黒は敵陣にせっせと弱点をこしらえた-という警句の真の意味が見てとれる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6 dxc6 5.d4 exd4 6.Qxd4 Qxd4 7.Nxd4 Bd6

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8.f4 f6 9.Be3 Ne7 10.Nd2 Ng6 11.g3 c5

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12.N4f3 b6 13.O-O Bb7 14.Rfe1 O-O-O 15.Bf2 Rhe8

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 これで両者とも展開が完了し、黒は敵の前線の突出地点を包囲しにいく。

16.Re2 Rd7 17.Rae1 Rde7 18.h4 h5 19.c4 a5

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20.a4 Kd7 21.Kf1 Bc6 22.b3 Kc8 23.Re3 Bd7

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 このビショップはもっと活躍できる場を求めている。

24.Kg2 c6 25.Nb1 Bc7 26.Nc3 Nh8 27.Rd3 Nf7 28.Red1 Bg4

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29.R1d2 Nh6 30.Bg1 Bb8 31.Bf2 Be6 32.Rd1 Bf7 33.Bg1 Bg6

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 白はずっと待機を強いられている。黒はついに白枡ビショップの最適の位置を見出した。

34.Nd2 Nf7 35.Re1 Bh7 36.Kf3 Nh6 37.Bf2 Ng4 38.Bg1 g5

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 黒の長くゆっくりした準備のあとここから闘いが加速されていく。

39.Re2 gxf4 40.gxf4 Rg8 41.Re1 Reg7 42.Ne2

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42...f5

 黒は白枡ビショップの筋とe列をこじ開けようとしている。白が 43.e5 とくるならば解体の手筋の 43...Bxe5 が炸裂し 44.fxe5 Nxe5+ 45.Ke3 f4+ 46.Nxf4 Rg3+ で黒の勝ちとなる。

 このように戦術的なひねりが黒の組織的な準備に栄冠をもたらす。

43.exf5 Bxf5

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44.Ne4

 代わりに 44.Rc3 なら 44...Re8 45.Rcc1 で素通しとなったe列で活動を再開することになる。

44...Bxe4+

 白のナイトが働き出す動きを見せるや否や黒はそれを無慈悲にも切って落としおまけに戦力も得する(fポーン)。

45.Kxe4 Re8+ 46.Kf3 Rf7

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47.Rdd1

 47.Rf1 としても無駄である。以下は 47...Bxf4 48.Nxf4 Rxf4+ 49.Kxf4 Rf8+ から ...Rxf1 でやはり黒が重要なポーンを取ってしまう。

47...Ref8 48.Rf1 Bxf4 49.Nxf4 Rxf4+ 50.Kg2 Rxf1 51.Rxf1 Rxf1 52.Kxf1 Nh6

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 この収局ではナイトはまだ急を要する任務を急いで果たさなければならない。というのは白キングがe4の地点を占めるのに間に合えば黒の二重になって狙われている余分のポーンはほとんど役に立たなくなるからである。

53.Ke2 Nf5 54.Bf2 Nd4+ 55.Kd3 Nxb3 56.Be3

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 敵のナイトの動きを制限することにより白は1ポーンを取り返すが、その結果の収局でも黒の勝ちである。

56...Kd7 57.Kc3 Nd4 58.Bxd4 cxd4+ 59.Kxd4 Kd6 60.Kd3 Ke5

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 黒キングは両翼をにらんでいる。

 次の手順でも良さそうだが実はそうでない-初心者には非常に参考になる-。60...Kc5 61.Kc3 b5(61...Kd6 は 62.Kd4 で抵抗する)62.cxb5 cxb5 63.axb5 Kxb5
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64.Kb3 Kc5 65.Ka4 Kd4 66.Kxa5 Ke4 67.Kb4 Kf4 68.Kc3 Kg4 69.Kd2 Kxh4 70.Ke2 Kg3 71.Kf1
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白は奇跡的に引き分けを成し遂げた。

61.Kc3 c5 白投了

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(62.Kd3 なら 62...Kf4)

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2009年11月16日

チェス500名局(112)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第112局

白 カパブランカ
黒 ヤノフスキー
(サンクトペテルブルク、1914年)

 この試合は白が難攻不落に見える敵陣をポーンで攻略した見事さで有名である。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6 dxc6 5.Nc3

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 この手も理にかなった展開の手である。白は中原の形をどうするかを将来に先送りしている。

5...Bc5

 5...Bb4 なら 6.Ne2、5...Bg4 なら 6.h3、5...Nf6 なら 6.Nxe5、最後に 5...Bd6 なら 6.d4 で白が中原の支配権を得る。

 黒の最善手は最初から中原に防御壁を構築する 5...f6 である。以下は例えば 6.Nxe5(このナイト切りは無理筋である)なら 6...fxe5 7.Qh5+ Ke7、6.d3 ならば 6...c5 で中原を封鎖、6.d4 なら 6...exd4 7.Qxd4 Qxd4 8.Nxd4 c5 9.Nde2 Be6 から ...O-O-O で黒は順調に展開できる。

6.d3

 6.Nxe5 なら黒は 6...Bxf2+ 7.Kxf2 Qd4+ 8.Ke1 Qxe5 9.d4 でなく 6...Qd4 7.Nd3 Ba7 で応じる。白は1ポーン得にもかかわらず動きが難しい。

6...Bg4

 ここでも 6...f6 の方が堅実だった。

7.Be3

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7...Bxe3

 7...Bd6 と交換を避ければ 8.d4 である。

8.fxe3 Qe7

 黒の反撃策には十分な実体がない。8...Ne7 9.O-O O-O の方が気が利いていた。ついでに言えば黒クイーンはd6の地点にいる方がよい。

9.O-O

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9...O-O-O

 この段階でも 9...Nf6 から ...O-O の方が戦略的に本手だった。

10.Qe1 Nh6

 ここでも実戦のひねった展開より 10...Nf6 の方が良かった。

11.Rb1

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 ルークが戦闘配置についた。

11...f6 12.b4 Nf7 13.a4 Bxf3 14.Rxf3 b6 15.b5 cxb5 16.axb5 a5

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17.Nd5 Qc5 18.c4 Ng5 19.Rf2 Ne6 20.Qc3 Rd7 21.Rd1

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21...Kb7

 黒キングは危険地帯にとどまっているより 21...Kd8 で反対翼に逃げた方が良かった。

22.d4

 この準備を整えたポーン突きで白陣が広がる。

22...Qd6

 この手は仕方がない。22...Qf8 では 23.dxe5 と取られる。

23.Rc2 exd4 24.exd4 Nf4 25.c5

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 このポーン突きは痛烈である。白の4ポーンの横隊が連携して攻撃態勢をとっていることに注目して欲しい。

25...Nxd5 26.exd5 Qxd5 27.c6+ Kb8 28.cxd7 Qxd7 29.d5 Re8 30.d6 cxd6 31.Qc6 黒投了

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2009年11月23日

チェス500名局(113)

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第1部 開放型

第5章 ルイ・ロペス

第113局

白 ドゥラス
黒 アリョーヒン
(マンハイム、1914年)

 本局は丁々発止の戦術が見ものである。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6 bxc6

 珍しい手だが面白い。しかし黒陣を開放する 4...dxc6 ほど理にかなっているわけではない。

5.d4 exd4

 5...Nf6 なら 6.Bg5 である。

6.Qxd4

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6...Qf6

 辛辣さに劣る 6...d6 ならば 7.O-O Qe7(7...Nf6 は 8.e5)8.Nc3 Nf6 9.Re1 となって黒はまだ展開に制約を受けている。

7.O-O

 白は単純化に同意した。もっと荒っぽい 7.e5 Qg6 8.O-O Qxc2 9.Nc3 はポーン損でも攻勢に立っただろう。

7...Qxd4 8.Nxd4 Rb8

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9.Nb3

 9.b3 は 9...c5 10.Ne2 c4 で黒も指せる。

9...Ne7 10.Bd2 Ng6 11.Bc3 Nf4

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 これは嫌がらせ戦略である。

12.Re1 Be7 13.N1d2

 13.Bxg7 なら 13...Rg8、13.g3 なら 13...Ne6 である。

13...O-O 14.Nc4

 これで駒の動員が完了し今度は捌きが始まる。

14...Re8

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15.Nca5

 この手はこれからしばらくの間相手のクイーン翼を抑えるがナイトが遠方を遍歴することになる。15.g3 Ne6 16.Rad1 が最も簡明だった。

15...Bf8 16.Rad1 c5

 この手はようやくdポーンを突くためである。白はまだ次の2手でそれを防ごうとする。

17.e5 Ne6 18.Nc4 h6 19.h4

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 このひねった手はやらずもがなである。

19...Be7 20.g3 g5

 このポーン突きは意欲的である。

21.hxg5 hxg5 22.Nba5

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 黒がキング翼に圧力をかけているので白は反対翼でバランスを取ろうとした。

22...Kh7

 キングが戦いに参加するためにg6の地点に向かった。

23.Kg2 Kg6 24.Rh1 Nd4

 黒は「戦線拡大の犠牲」で行動範囲を広げようとしている。

25.Bxd4 cxd4 26.Rxd4 Bb4

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27.Nb3

 27...Bxa5 28.Nxa5 Rxb2 で3個のポーンが当たりになるのをかわした。

27...d5

 黒は敢然と打って出た。

28.Ne3

 28.exd6e.p. は 28...Bb7+ 29.f3 cxd6 30.Nxd6 Re2+ 31.Kf1 Bxf3 でだめだし、28.Rxd5 にはもちろん 28...Bb7 である。

28...c5 29.Rxd5

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 交換損で2ポーンを得るのは賢明な犠牲だった。これで双ビショップの厳しい利きを終わらせた。

29...Bb7 30.c4 Rxe5

 ポーンを取り返して勢力の均衡は再び黒の方に傾いた。

31.a3

 白は単に 31.Rhd1 とするより形を決めることを望んだ。

31...Bxa3

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 この手は強制されたものだが必然でもある。この肉薄戦は非常に興味深い。

32.Na5

 白は切り返して来た。代わりに 32.bxa3 なら 32...Bxd5+ 33.cxd5 Rxb3 34.Rd1 Re4 35.d6 Rd4 36.Rxd4 cxd4 37.d7 Rb8 38.Nc4 Kf6
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で黒の勝ちになる。

32...Bxd5+ 33.cxd5

 黒は 34.bxa3、34.Nc6 および(33...Rxb2 のあと)34.Nac4 という複数の狙いにさらされている。

33...Rxe3

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 これはうまい「しっぺ返し」だった。ここまでの5手の小ぜり合いは二人の名フェンシング選手の突きとかわしを髣髴(ほうふつ)とさせる。

34.fxe3 Rxb2+ 35.Kf3 f5

 35...Rd2 は 36.Nc4 でだめである。

36.g4

 36.Nc4 は 36...g4+ 37.Kf4 Rb4 でだめである。

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36...fxg4+ 37.Ke4 Rb4+ 38.Kd3 Bb2 39.d6 Bf6 40.Rf1 g3

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 ポーンの昇格競争である。

41.d7 Rb8 42.Rd1

 42.Nc6 は 42...g2 43.Rg1(43.Rxf6+ なら 43...Kxf6 44.Nxb8 Ke7 で黒の勝ち)43...Rb6 44.d8=Q Bxd8 45.Nxd8 Rd6+ 46.Kc4 Rxd8 47.Rxg2 Kf5
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でやはり黒が勝つ。

42...g2 43.Ke2 Rb2+ 44.Kf3 Rd2

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 急所の列とポーンを制した。

45.Rg1 Rxd7 46.Rxg2 Rd3 47.Rc2 Rc3 48.Rxc3 Bxc3 49.Nc4 a5 50.Nb6 Bb4 白投了

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