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大一番

「先生、村井さんが参りました」
「うむ、ここに通しなさい」
 家政婦を退け、衆議院議員の橋爪勘九朗は、政策秘書の村井晋平が来るのを待った。
「お休みのところ、すみません」
「こうやって自宅で、のんびりできるのも、君のおかげだ!さあ、座って一杯やりなさい!」
 橋爪は村井に日本酒を勧めた。十二畳の和室には、橋爪と村井の二人だけだ。
「村井君・・・・『大事な話がある』と言ってたね?」
「は、はい・・・・」
「何だね?」
「はあ・・・・」
「どうしたんだ?んん?いつもの君らしくないじゃないか?遠慮なく、言いたまえ!」
「先生・・・・私と先生のお嬢さんとの結婚をお許しして頂けませんか?」
「はっ??」
「私は、お嬢さんを、恭子さんを愛してます!必ず、幸せにする自信があります!」
「ほ、本気で言っとるのか、君は?」
「先生、お願いします!どうか!」
「村井君、頭を上げなさい!しかし議員が秘書に縁談を持ち掛けることはあっても・・・・」
「・・・・」
「村井君。そういえば、以前『趣味はチェスです』と言っておったなあ?」
「はい」
「実は、昔、私も少しやってたんだよ!」
「初めて聞きました」
「私と対局して、君が勝てば許そう」
「えっ?!しかし・・・・」
「私に勝てる自信が無いのか?」
「・・・・」
「村井君!男はな、勝算が無くても腹をくくって勝負しなければならんときもあるんだよ!」
「・・・・わかりました」

 白:村井晋平  黒:橋爪勘九朗
1.d4 g6 2.c4 Bg7 3.Nc3 f5 4.Nf3 Nf6 5.g3 d6 6.d5 0-0 7.Bg2 Na6 8.0-0 Qe8 9.Be3 c6 10.dc6 bc6 11.Nd4 Bd7 12.Qa4 Nc5 13.Qc2 Rb8 14.Nb3 Nb3 15.ab3 c5 16.Ra7 Ng4 17.Bg5 h6 18.Bd2 Ne5 19.Nd5 Nc6 20.Rd7 Qd7 21.Bc3 Nd4 22.Qd1 e5 23.b4 Ne6 24.b5 f4 25.Bh3 g5 26.Qd3 fg3 27.hg3 Qe8 28.b6 Rb7 29.Qe4 g4 30.Bg4 Ng5 31.Nf6+ Bf6 32.Qb7 Qb8 33.Qd5+ Kg7 34.b7 Nf7 35.Ra1 Nd8

 白三十六手目Bf3で、橋爪は自分の負けを村井に告げた。
「先生、まだRf7とすれば」
「いや、それでも白が優勢なことに変わりない。黒二十手目Rd7、ポジショナル・エクスチェンジ・サクリファイスだな」
「・・・・」
「・・・・約束だったな。健治、出てきなさい!お前も私たちの話を聞いてたんだろ!」
「オヤジ・・・・いや、お父さん!今はアタシ、恭子よ!!」
 隣の部屋から、恭子が入ってきた。
「恭子、私からは何も言うことは無い!あとは二人で、よく話し合え」
「お父さん、ありがとう!!」
「まあ、村井君なら恭子を安心して任せられるよ!どうした、村井君?顔色が悪いぞ!まさか『性転換手術で女になった奴は愛せない』とか、言うんじゃないだろうな?」

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2006年04月15日 02:17に投稿されたエントリーのページです。

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