「あら?まだ、起きてたの?」
「・・・・」
「どうしたの?電気もつけないで」
「・・・・」
「明日はチェスの例会でしょ?朝、早いんじゃなかった?」
「・・・・」
「何で・・・・黙ってるの?」
「・・・・どこ、行ってたんだ?」
「えっ??」
「どこ、行ってたんだよ??」
「朝、言ったでしょ!!今日は朋美と逢うから遅くなるって」
「ああ?」
「何よ?」
「本当のこと、言えよ!!」
「・・・・どうしたの?」
「だから『本当のことを言え』て、さっきから言ってんだろうが!!」
「何で・・・・怒ってるの??」
「・・・・誰と、いたんだよ??」
「だから朋美と」
「おい!!もう一回訊くぞ!!誰と、どこに、行ってたんだよ??」
「ちょっと・・・・どうしたの??」
「じゃあ・・・・これは何だよ??」
「何、これ?」
「ここに写ってるのは、誰だ??」
「誰?これ?」
「じゃあ・・・・こっちは??」
「・・・・」
「お前を・・・・尾行してたんだよ!!」
「・・・・」
「ふざけやがって!!」
「・・・・アンタも、暇ねえ」
「はあ??」
「最初から、そう言えばいいじゃない!!」
「なんじゃ、そりゃあ?逆ギレか??」
「言っとくけど・・・・あたしと『一緒になりたい』て、言ったのはアンタの方でしょ!!」
「それが??」
「あたしはね・・・・アンタみたいな安い男に、ずっと縛られたくないの!!」
「・・・・テメエ」
「アンタ・・・・チェス、やってんでしょ?」
「それが、今、何の関係があんだよ??」
「あたしみたいな女王様が、アンタみたいな小物ひとりで、満足できるわけないでしょ!!」
「ああ??・・・・何だ、夢かあ・・・・ああ、良かったあ!!」
<確か・・・・明日の例会で、初めて使うオープニングのチェックをしてたんだな。いつの間にか・・・こんなとこで寝ちまってたのかあ>
孝志はダイニングテーブルを離れ、寝室に向かった。既に妻の由希は眠っている。
<・・・・相変わらず、寝相の悪い奴だな>
布団をかけ直そうと近づくと、由希が寝返りをうった。その拍子にはだけた由希の左胸元を見て孝志は驚いた。見覚えのない赤い斑点が二、三個あったからだ。
<んん?何だ、ありゃあ??まさか・・・・いやいや、ウチの奥さんに限って、そんなことはないだろう・・・・たぶん>