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全世代憎悪

「次の方、どうぞ」
「三十五歳、男性です」
「お悩みは?」
「職場で・・・職場以外でもそうなんですが、若い連中の考えている事が理解できません」
「若い連中の大体の年齢は?」
「そうですねえ、十歳下かな」
「二十五歳くらいの方ですね」
「なんか・・・異星人と話しているような感覚になるときがあります」
「異星人・・・・ですか」
「そいつ等は、一人でいるときはおとなしいんですが、複数になるとギャングみたいな行動に走りやすいですねえ」
「はあ・・・・」
「自分たちと年齢が近い人間としかコミュニケーションをとりたがらない感じがします」
「そうですねえ・・・・貴方くらいの年齢の方から、よく似た感想を聞くことが多いですねえ」
「連中と、どう接したら良いですか?」
「・・・・この際、考え方を変えてみますか?」
「考え方、とは?」
「基本的に若い年齢の方々は年をめされた方々に比べて教養・人生経験が足りません。ですから、若い人たちを自分の都合の良いように操るんです」
「操る?」
「ええ。だって、貴方ほどの年齢の方々でしたら、ある程度は可能でしょ?」
「なるほどなあ・・・・確かに馬鹿が多いもんな!!若い奴等は」
「やってみますか?」
「やろうと思ったら簡単だよ!!でも、俺はやらないよ」
「どうして?」
「俺はなあ、自分より弱い立場の人間をだなあ騙して泣かせるような恥知らず、じゃあ無いんだよ!!」
「・・・・」
「ああ、オマエみたいなロクデナシと話すのは時間の無駄だ!!帰るか」
「ハハハ」
「何、笑ってんだ?」
「だって、貴方は馬鹿だもん!!」
「なんじゃ、こら」
「だって、自分より弱い奴を叩きのめす、なんてこと、今の時代、当たり前のことじゃあないですか!!」
「はっ?おい、人と話すときは気をつけて話をしろよ」
「なんですか?もしかして・・・・」
「わかるだろ?」
「貴方、ホントに馬鹿だ!!長生き出来ませんよ!!」
「・・・・オマエが今までどんな奴と話をしてきたか知らんが・・・・この俺を、今まで会った人間と一緒にするなよ!!」
「そうですねえ・・・・たまに、貴方の世代の方で貴方と似たような反応はありましたねえ」
「・・・・」
「さて・・・・貴方はどうやら今の時代に珍しく〝心の優しい方〟のようですねえ」
「別に」
「いや、今時あまりいないんです!!」
「・・・・」
「平気な顔をしてですねえ『自分より劣った人間から財産を巻上げて何が悪い?』と言う人がいますからねえ」
「・・・・まあ、いるだろうな」
「さてと・・・すみませんが、お昼休みの時間になりました。話の続きは・・・・」
「・・・・わかった。どうしたらいい?」
「お時間は、よろしいですか?」
「今日は休みの日だから・・・時間はある」
「そうですか・・・・では、また一時間後に」

「ああ、すみません。それでは、さきほどの続きです」
「ああ」
「お尋ねしたいのですが・・・・貴方は、もしかして自分より年上の方にも不満はありませんか?」
「上の連中か・・・・ああ、あるよ」
「やはり、そうですか」
「だってよお、偉そうに俺たちに説教垂れながら、アイツ等だって大したことねえんだから」
「・・・・」
「だからといって、俺と同い年の連中も偉人なんざあ、いないけどな」
「・・・・以前から思ってたことがあります」
「何だ?」
「貴方たちの世代は、まだ体育会系の名残りがありますねえ」
「ああ、そうだねえ」
「前時代的な体育会系だと、変な先輩がいたら後輩は堪ったもんじゃないですね」
「ああ」
「あまりにも年功序列的なことがあると、基本的に上の世代を憎むようになります」
「まあね」
「これを私は〝前世代憎悪〟と定義しているんですが・・・・果たして、今はどうなんでしょうか?」
「今の若い奴等なんか、まだ恵まれてるぜ!!俺たちに比べれば」
「どういう点で?」
「俺たちのときなんて・・・メチャクチャだったよ!!問題の先送りばかりしてたし、情報操作だって今より派手にやってやがったし」
「でも、それは今でも同じじゃあ、ないですか」
「便利なツールなんて無かったからなあ。情報を手に入れるのが今より大変だった」
「でも、同時代を知っている方なら条件は同じではないですか」
「・・・・まあ、そうかもしれんが・・・・ある意味、今の若い連中が羨ましいよ」
「でも、さっき貴方は若い連中のこと、嫌ってませんでしたか?」
「嫌いなことは嫌いなんだが・・・・何で若い連中は、こんな便利な世の中で短絡的なことしか発想が浮かばないんだろう?」
「短絡的とは?」
「忍耐なんか、全然しらんだろう。想像力なんてカケラも無いんじゃないか」
「まあ、それは若いですからねえ」
「・・・・」
「この頃、思ってたんです。〝前世代憎悪〟は〝全世代憎悪〟じゃないか?って。ゼンが全のゼン」
「全員か」
「ええ」
「全ての世代で憎悪ですか」
「年寄りを敬う気持ちなど無く子供を守る心など無い。ただ、自分以外は敵。自分にとって都合の良い人だけが味方。ただ、自分にとって都合の良い人が苦境に陥ったときは遠慮なく陵辱する」
「ふっ、世も末だな」
「しかし・・・考えてみれば、全世代憎悪など次の三点に比べればマシな方かもしれません」
「次の三点というのは?」
「厄介な順に、身分差別、人種差別、既得権争奪」
「全世代憎悪なんて、この三つのうちのひとつでも改善されたら、少しはマシになります。ただ、この三つのうちの一つが改善されるなんてこと、たぶん私も貴方も生きているうちには、ないでしょうね」
「既得権争奪なあ・・・・しかし、その言葉だけだと、勘違いする奴はいないか?」
「勘違いしてくれる人はまだ良心的な人です。悪意に満ちた人なら、私が意味することは瞬時にわかりますよ。悪事を働いている輩ほど、自分の後ろめたさは、よく承知しているはずです」

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2007年04月21日 02:58に投稿されたエントリーのページです。

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