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サクリファイス 番外編 2

「兄ちゃん、大丈夫か?」
「は、はい。大丈夫です」
「えーと。そしたら、続きを聞かせてもらおうか」
「はい」
 谷沢憲二は四十代の男性警察官に促され、話を続けた。

「おい、行くぞ!」
「ちょっと!!あたしは、そんな気は無いわよ!」
「うるせーな!!ガキじゃなえんだからよ、ほら!!」
「アンタじゃ、嫌!!」
「何でだよ??」
「アンタみたいなチェスプレーヤーは嫌!」
「ああー??」
「アンタさあ、アンタが白番で初手d4とするわね」
「何で、チェスの話になるんだ?」
「いいから、聞きなさい!!アンタが白番で初手d4としたときに、相手がd6と指してきたら、どうする?」
「ああ~??黒がd6としたら?う~ん、そうだなあ、二手目はe4かな」
「イーフォー??」
「何だよ?」
「あー、やだやだ!!d4と最初に指したら、二手目はc4か、Nf3でしょ!!d4プレーヤーなら!」
「別に良いだろ!」
「あたし、初手にd4と指して、d4のゲームしない奴はキライなの!!それじゃ!」
「わかった、わかった。今度から、e4のゲームにトランスポーズ(変更)しないから!!」
「それじゃあ、今度は黒の初手がf5だったら?」
「白の初手は?」
「さっきと同じ、d4」
「う~ん・・・・。e4かな~?」
「何それー??スタントン・ギャンビット?」
「だって、よくある手だろ!」
「あたし、d4プレーヤーでクイーンズ・ギャンビット(d4 d5 c4)以外のギャンビットは認めないの!」
「わかったよ~。もう、しないから」
「嘘?」
「本当だよ!」
「それじゃあ・・・・」
「まだ、あるんかー?」
「これ、最後。キングスギャンビット・アクセプテッド(e4 e5 f4 e×f4)で白三手目にBc4としたときは?」
「俺が黒番だな?」
「そう」
「Qh4+」
「やっぱ、そうきたか」
「ああー?」
「それじゃ、その続きで白の四手目がKf1だったら?」
「Bc5かな」
「あたし、帰る!!」
「ちょっと!!待てよ!!」
「アンタって、最悪!!」
「どういうことだよ??」
「さっきのは強制手順にちかいから、白は避けれないの!。まるで飢えた男が可愛い女の子にさあ、初対面でいきなり『あなたの×××に俺の×××を挿入させてくれ!!』って、言ってるようなもんだわ!最低!!」
「何だよ!!さっきから、何だかんだ言いやがってよお!!」

「・・・・はいはい、わかった。うん、これで話がつながった!じゃあ、最初から整理するね」
「はい」
 さきほどの警官は谷沢の供述をメモにまとめ、読み上げていく。
「本日の午後十時半頃、桜宮のラブホテル街で、谷沢さんは知人の三十代女性に『ホテルに行こう』と誘った」
「はい」
「しかし、嫌がる女性と口論になったので、谷沢さんはカッとなって女性の右腕をつかみ、あー、右腕のどの辺り?」
「この辺」
「あー、二の腕ね。二の腕を掴み、ホテルに連れて行こうとした」
「はい」
「すぐに女性は谷沢さんの手を振り解き、逆に谷沢さんの左肘関節をきめた。そして、そのまま近くの大川に谷沢さんを投げ飛ばして立ち去った。これでいいかな?」
「はい、そうです」
「はあ・・・・。君ねえ、あの辺りは流れが急なんだよ!下手したら、君、死んでだよ!」
「はあ・・・・」
「それに・・・・。情けないと思わんか?」
「いや、お巡りさん!たまたま通りがかって、交番でこうやって毛布まで貸してくれて、ありがたいんですが。まさか、あいつが格闘技をやってるとは知らなかったので」
「いや、そういう意味じゃなくて!」
「はあ?」
「あのな!人間をチェスの駒に譬えてみるとだね。Kが十二歳以下の子供。Pが十三から十九歳だ。Nが二十代。Rは三十から四十代の男で、Qが三十から四十代の女だ。Bが五十代以上になるわけだ。わかるか?」
「は、はあ?」
「女はQになれるが、男は、どう頑張ってもRにしか、なれないんだ!!女にだなあ、いくら対抗しようと思ってもだなあ、無駄なんだよ!!」
「でも、お巡りさん!それじゃ、女にモテない男は一体どうしたら良いんですか?俺は女が大好きなんですよ!!それなのに、女連中ときたらですねえ・・・・どうして、二十代や三十代の女のなかから『どこからでも、かかってこい!!』といった、度胸のある人が出てこないんだろ?そういう女の人が多くなれば、世界はもっと平和に暮らせるようになれると思ってるんですよ!私は!」
「しょうがねえだろ!男は女には勝てねえんだからよ!!女の機嫌とらなきゃ、男は生きていけねえんだよ!!」

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2008年04月22日 00:47に投稿されたエントリーのページです。

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