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第2章 異種のピースによる戦い アーカイブ

2008年01月07日

第2章 異種のピースによる戦い (1)

クイーン対ルック

 たいていの場合、クイーンを持っている側が、ルックを持つ側に勝ちます。勝つための作戦としては、クイーンとキングを相手のキングとルックのそばに移動させ、それらの連係を断つことが挙げられます。それから、クイーンによるチェックを利用してルックを取るか、ルックの掩護を失ったキングをメイトにするのです。

 不利になる指し手を強いられるような状況にある局面を、チェスの論理に関する用語でツークツワンクの局面と言います(ドイツ語のZug:指し手; zwingen:強制する・強いる)。
つまり、勝つための作戦は、ルックを持つ側がキングから無理やり引き離されるような手を指さざるを得ない―それから負けてしまう―ような、ツークツワンクの局面にすることからなります。のちのち私たちは、ツークツワンクの局面に持ち込むことが、多くのエンディングにおいて重要な戦略的課題のひとつであるということに気づきます。
 10は、その典型的な局面です。
figure10.JPG 10

 黒はツークツワンクの状態にあります。1...Ka6に対しては2.Qc8という応手が決定的になりますし、1...Rb8では2.Qa5#となってしまうので、黒はルックをキングから遠ざけなければなりません。
1...Rb4では2.Qe7や2.Qa5+でルックがすぐに取られてしまいますし、1...Rb2や1...Rg7では2.Qd4とされてしまいます。結局考えるだけの価値がある指し手となれば、1...Rb3, 1...Rf7, 1...Rb1, 1...Rh7のいずれかです。しかし、いずれの場合でも、白のクイーンによるチェックの連続の後、ルックが取られてしまいます。

 1...Rb3なら2.Qd4+ Kb8 3.Qf4+ Ka7 4.Qa4+ですし、1...Rf7なら2.Qd4+ Kb8 3.Qb2+ Ka8 4.Qa2+と続きます。もし1...Rb1ならば2.Qd4+ Kb8 3.Qh8+ Ka2 4.Qh7+で白勝ちですし、1...Rh7ならば2.Qd4+ Kb8 3.Qe5+ Ka7 4.Qa1+ ~ 5.Qb1+までです。

2008年01月15日

第2章 異種のピースによる戦い (2)

(前回からの続きです)

 ルックは自在に動けるこまではありますが、この例を見ると、どこへでも動けるクイーンの強打を受けてしまうと、ルックはいつでもやっつけられてしまうことが明らかでしょう。

 もし、10の局面で白の番だったら、これ以上相手に近づかないことです、つまり1.Qc8とすると1...Rb6+とされ、2.Kc7と逃げてしまうと2...Rc6+でステイルメイトによる引き分けに持ち込まれますので、白キングはc5のマスへの退却を余儀なくされます。

 従って、勝つためには黒に手番を移すといいでしょう。これは1.Qd4+ Ka8 2.Qh8+ Ka7 3.Qd8と進めることによって成立します。黒はツークツワンクの状態に陥りました。後の手順はお分かりですね。

 次の局面の分析では、キングに迫っていくときの方法を知っておく必要があります。

figure11.JPG 11

 1.Qf6+ Ke8 2.Qh8+、ここで2.Ke6は間違いで、2...Rd6+! とされて、たちまち引き分けにされてしまいます。白は、黒からのステイルメイトにされる可能性があることを絶対に忘れてはいけません。

 2...Kf7 3.Qc8 Ke7と進みますが、黒がルックを遠くに動かすと、すぐに負けてしまいます。もし3...Rd3ならば4.Qc4が決定的になりますし、3...Rd2ならばQb7+ Ke8 5.Qb5 Kf7 6.Qc4+ Ke8 7.Ke6で白勝ちです。また、もし3...Rd1と指せば4.Qc4+ Ke7 5.Qb4+ Kd8 6.Ke6で白勝ちです。いかにしてクイーンが2つの任務(つまり相手のキングの動きを制限することと、黒ルックが背後からチェックをかける隙を与えないこと)を同時に実行しているか、観察してみましょう。

                                        (この項続きます)

2008年02月09日

第2章 異種のピースによる戦い (3)

(前回upから日にちが過ぎてしまいましたが、続きです。)

 結局のところ、もし黒が3...Re7+と指すと、4.Kc5 Kg7(4...Re8ならば5.Qc5+ Ke7 6.Qc7+ ~ 7.Kc6) 5.Qd8 Rf7+ 6.Kg5 Kh7 7.Qd4 Rg7+ 8.Kf6 Kg8 9.Qd8+ Kh7 10.Qe8と続き、10と左右対称の駒の配置になります。それでは11図3手目以降の局面の推移を、引き続き見てみることにしましょう。

 4.Qg8 Rc7と進めます。縦筋に沿ってルックが退却すると、負けを早めてしまいます。4...Rd3や4...Rd2には、5.Qh7+や5.Qg5+が決定的で、また4...Rd1としても 5.Qg5+ Kf8(お分かりでしょうが、すぐにルックをとられないで済むような唯一の手です。) 6.Qf4+ Ke7 7.Qh4+ Kf8 8.Ke6と進んで、黒はメイトにされるか、ルックを失うことになるのです。

 黒の4手目から、5.Qg7+ Kd8 6.Qf8+ Kd7 7.Kd5! Rb7と進めていきます。黒はルックをランクに沿って動かさざるを得なくなります。ここで7...Rc6 8.Qg7+、7...Rc7 8.Qf5+ですし、だからといって7...Rc8としても8.Qf5+ Ke8 9.Qh5+ Kd7 10.Qg4+ Ke8 11.Kd6で白の勝ちです。

                           (この項続きます。)

2008年02月20日

第2章 異種のピースによる戦い (4)

(前回からの続きです)

 8.Qf7+ Kc8 9.Qe8+ Kc7 10.Kc5 Ra7と進めます。ここまできたら、黒ルックが横筋ではなく縦筋に逃げたとしても、読者の皆さんは白の正しい応手を簡単に見つけられますよね。

 さらに11.Qe7+ Kb8 12.Qd8+ Kb7 13.Kb5 Ra8 14.Qd7+ Kb8 15.Kb6と進めます。黒は命との脅威を前にして、満足な守備ができません。


 ルックを持つ側が、クイーンを持つ側に対して守りきれるのは、ごく例外的な状況の場合だけです。次の図をご覧ください。
figure12.JPG 12

 この局面では、白の駒の配置が悪いので、黒がパーペチュアル・チェックに持ち込むことができます。
1...Rg7+ 2.Kf5 (2.Kf6なら2...Rg6+!) Rf7+ 3.Kg6 Rg7+ 4.Kh6 Rh7+! です。黒の4手目がポイントで、ルックが捕られれば、ステイルメイトになります。

2008年02月27日

第2章 異種のピースによる戦い (5)

クイーン対マイナーピース
マイナーピースが相手なら、クイーンを持つ側が簡単に勝てます。
もし相手がビショップを持っていたならば、クイーンとキングを、ビショップが通らないマスに進めながら展開させます。
figure13.JPG13
13からは1.Qb5 Kd6 2.Kd4 Be6 3.Qb6+ Ke7 4.Ke5 Bf7 5.Qd6+ Ke8 6.Kf6 any 7.Qe7#です。
 相手がビショップを持っている場合でも、相手キングをボードの端に追い込むことが、裸のキングに対するクイーン・エンディングと同じくらいわかりやすい方法になります。

 ナイトはビショップよりもキングの守りに適しています。しかしクイーンのような強力な駒と戦うには、あまりにも非力です。
figure14.JPG14
14から1.Kb2 Kd5 2.Kc3 Ne4+ 3.Kd3 Nc5+ 4.Ke3 Ne6と進めます。黒はできるだけ長くボードの中央に居座っていようと奮闘しますが、5.Qf5+ Kd6 6.Ke4 Nc5+ 7.Kd4 Ne6+ 8.Kc4 Nc7 9.Qc5+ Kd7 10.Qb6 Ne6 11.Kd5 Nc7 12.Ke5 Ne8 13.Qe6+ Kd8 14.Qf7 Nc7 15.Kd6 Nb5 16.Kc5と進められてしまうと、黒はナイトを犠牲にする以外にメイトされるのを引き伸ばすことができなくなります。

2008年03月02日

第2章 異種のピースによる戦い (6)

ルック対ナイト

 ルック対ナイトの駒割りの時には、ルック側必勝の手順というものはありませんが、守備側にもある程度正確な指し手が要求されます。次の例で確かめてみましょう。

figure15.JPG15

 白の1.Kf6に対して、1...Kh8とすると2.Re8 Kg8 3.Rd8で黒が負けてしまいますので、黒の唯一の応手は1...Nh7+です。これから、2.Kg6 Nf8+ 3.Kh6 Kh8 4.Rf7 Kg8! (4...Ne6とすると5.Rf6ですぐに負けてしまいます。) 5.Rg7+ Kh8 6.Rg1と続きます。見る人によっては白が目標を達成したような印象を受けますが、まだ黒にはゲームで逃げ延びるだけの指し手があります。
 6...Nd7!です。これまた唯一の応手です。6...Nh7とすると7.Kg6 Kg8 (7...Nf8+とすると8.Kf7 Nh7 9.Rg8#) 8.Rg7 Nf8+ 9.Kf6+と続き、10.Kf7とされます。また6...Ne6は7.Kg6 Nf8+ 8.Kf7です。
 これに対して白は7.Kg6と指すくらいで、白は勝てないのです。というのも、7...Kg8! 8.Rg2 Kf8と応対されるからです。黒は8.Rd1とされたら8...Nf8+としておけば安全です。

 つまり、ルック対ナイトのエンディングでは、キングがボードの端に縛られても危険ではないのです。
 しかし、ナイトとキングの位置が悪ければ、負けてしまうこともあります。

(この項続きます)

2008年03月04日

第2章 異種のピースによる戦い (7)

(前項からの続きです)

figure16.JPG 16
16に示す局面は、はるか19世紀から知られているものです。1.Rd7 Kb8 2.Kb6 Ka8 3.Rh7 Nd8 4.Rh8で、黒はナイトを失います。
 この例は、原則として、ナイトはボードの隅にいると働きが弱くなるということを示しています。

 この駒割りでのエンディングにおいてルックを持つ側が勝ちになる可能性があるのは、相手のキングとナイトが離れている場合です。ルックを持つほうがナイトを取るか、ナイトの掩護を妨害されたキングをメイトにするようにプレーします。

figure17.JPG 17
 17の局面では、ナイトはすでにキングから離れたところに立たされています。したがって、白のこれからの仕事は黒のピースが再び連絡することを妨げ、ナイトを包囲してしまうことです。白を持つウィルヘルム・シュタイニッツは19世紀最強のプレーヤーの一人ですが、作戦を以下のようにして遂行していきました。

 17の局面から1.Re4 Nd1 (もし1...Ng2なら2.Kf6~3.Kg5~4.Re2でナイトが包囲されてしまいますし、1...Nc2であれば2.Kd5 Na3 3.Kf5 Nb1 4.Kg4 Nd2 5.Rf4+ Ke7 6.Kf3 Ne1+ 7.Kg2 Nd2 8.Kf2です。) 2.Rf4+ Kg7 3.Rf3と進みました。けっきょくナイトはボードの端に追いやられ、キングから遠ざけられてしまいました。これからナイトを捕まえにかかります。
3...Kg6(ほかに3...Nb2は4.Kd5 Kg6 5.Kd4 Kg5 6.Rf1! Kg4 7.Rb1 Na4 8.Rb4) 4.Ke5 Kg5 5.Kd4 Kg4 6.Rc1 Nb2 7.Rb1 Na4 8.Rb4でナイトが捕まりました。

2008年03月06日

第2章 異種のピースによる戦い (8)

ルック対ビショップ

 ルック対ビショップのエンディングは、たいてい引き分けに終わります。ここでも、ルック対ナイトの場合と同様に、ビショップがボードの端に追い込まれないように正しく受ければ引き分けに持ち込めます。
 覚えておいてほしいことがひとつあります。それは弱い方のキングは、ビショップがいけない隅のマスに行くように努めることです。次の例は、知っておくべき重要な局面です。
figure18.JPG18
 黒にキングは安全な隅のマスにいます。読者の皆さんは、ここから黒のピースの動きを制限しようとどんな努力をしても、黒がステイルメイトになるだけであることに納得していただけるでしょう。
さて、次にルック対ビショップの駒割りで、受けを間違えている例をお示しします。

figure19.JPG 19
 黒のキングは「危ない」隅ともいえる悪い位置にいるので、白は勝つことができます。
 まず1...Bg1 と指します。ビショップが白キングに隠れないと1.Rd7 Bb6 2.Rb7 Bc5 3.Rb8+ Bf8 4.Ra8で次の手でメイトにされてしまいます。
 これから2.Rf1 Bh2 3.Rh1 Bg3 4.Rg1 Bh2 5.Rg2!と進めていきます。黒のやけっぱちな守備にもかかわらず、白はビショップをおびき出すことに成功しました。これからの手順は簡単で、例えば5...Be5 6.Re2 Bf6 7.Re8+と進めて、2手詰めにする順などがあります。

 キングとビショップが離れているときも、ルックを持つ側が勝つことがあります。
figure20.JPG20
 この項のまとめとしてお示しした20の局面は、1.Kf3として白が勝ちです。ビショップは自由に動き回れるのですが、適切な移動場所がありません。

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